ラホヤのソーク研究所
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻 助教授・博士(工学)
清家 剛
「荒野の七人」という映画をご存じの方は多いと思う。黒澤明監督の名作「七人の侍」(1954年)をもとに、「OK牧場の決闘」(1957年)など西部劇の巨匠ジョン・スタージェンス監督が、舞台をメキシコに置き換えてリメイクした1960年の西部劇の傑作であり、私がもっとも好きな娯楽映画の一つである。なんたって、ユル・ブリンナーやチャールズ・ブロンソンという名優がずらりと並ぶ中に、スティーブ・マックイーンとジェームズ・コバーンという私の大好きな二人が渋い役で登場する作品なのである。「七人の侍」の方がよかったという意見はあるだろうが、すばらしい娯楽作品ということには、間違いないと思う。
さてこの映画、西部劇好きの私にとっては、小学生の頃から何度もテレビで見た作品だが、西部ってどのあたりだろうと思ったことありません?やっぱカリフォルニアのあたりかしらと、あまり実感なく思っていたのが本音なのだが、この映画の最初に、メキシコの貧しい村を荒らす族どもが、「サンファン」という地名を口にしているのに気づいたのは、私が最初のアメリカ旅行から帰ってきた直後にたまたまNHKで見た時だったんです。
サンファンとは、<San Juan>と書くラテン系の地名によくあるスペイン語読みの発音で、カリフォルニア州はロサンゼルスの南、オレンジ郡の南端にある地名である。映画の中では族たちが、そこに教会があり、年に2回司祭がやってきてミサがあることと、そこのお宝を自分たちが盗んだことを自慢するところから話が始まっている。そのサンファンに行く機会があったので、そうかあのあたりが西部劇の地域なんだと感心したのである。そしてまさしく、映画の会話に登場した大きな教会を見ることが出来たのでした。
サンファン、あるいはサン・ホァンと日本語では記述することもあるが、ここには18世紀建立の古いスペイン統治時代の教会、かつてカリフォルニア最大を誇ったサン・ホァン・カピストラノ伝道教会がある。ああ、ここが西部劇の舞台なんだなあ、なんてことはそのときには思わなかったけど、アメリカ合衆国成立以前の風景を見ることは、それなりに感動的でした。1806年建造の教会は地震で失われたが、18世紀の建造物を一部残しており、西部劇のころの面影があって、風情がありました。[続きを読む]