アトランタのハイアット・リージェンシー

この原稿は東京大学の清家剛先生に依るPCSA広報誌(2003年26号)にご執筆頂いた原稿を当時のまま掲載しております。所属・肩書き等も当時のままです。

東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻 助教授・博士(工学)

清家 剛

みなさんの中で「風と共に去りぬ」という映画を知らない方はさすがにいないでしょう。1939年に作られ、アカデミー賞10部門受賞という名作中の名作であるこの映画は、アメリカの南北戦争時代の南部を舞台に、ビビアン・リー演ずるスカーレット・オハラとクラーク・ゲーブル演ずるレット・バトラーの人生を描いた物語です。ビビアン・リーの女っぷりと、クラーク・ゲーブルの男っぷりだけで十分に楽しめるのに、戦争のシーンやアトランタの町の炎上シーンなどダイナミックな映像も印象的な大作です。ただ、これを映画館のフルスクリーンで見たという人は、最近少ないのではないでしょうか。私もテレビでは何度も見たことがありましたが、一度は映画館で見なきゃと思い、大学生時代に授業をさぼって、平日の新宿の映画館に足を運んだことがあります。今やレンタルビデオが充実して、このような名作を上演する映画館も少なくなりましたが、映画館の大画面で見るのはいいですよ。ただ観客数が27人、そのうち私以外は13組のカップルだったことが、ちいと寂しかったのですが。

さて、この映画の舞台となったのはアトランタとその近郊の架空の町タラ、原作者のマーガレット・ミッチェルがアトランタに住んでいて、この町で執筆したんです。ただし、現在のアトランタはそのころの面影の全くない現代的な都市となっていて、わずかに作家の生家やダウンタウンのはずれのレストランが、映画よりは後の時代だけど、以前のアトランタを想像させてくれます。

現代都市のアトランタは、大リーグでは強豪アトランタ・ブレーブスの本拠地で、1996年にオリンピックも開催されたし、名前はよくご存じかと思いますが、町の印象はあまりないのではありませんか。実はこの町、写真のような高層ビルの現代都市というだけでなく、プレキャストコンクリートカーテンウォール(以下PCカーテンウォール)が盛んに使われている町なのです。

日本のPCカーテンウォールの多くは、タイル打込みや石打込み仕上げまたは塗装仕上げで使われることが殆どですが、アメリカでは、素地仕上げ、つまりたたきや洗出しによってコンクリートの素地を荒らして、石の代替品として使われることが多いのです。例えば、低層階にはグレーの石を使うが、5階から上はそれに似た感じのPCカーテンウォールを使っているという建物が、いくつもあります。工場を見に行くと、いろいろな色の骨材があり、これを使って少し色の付いたコンクリートを作り、その表面を洗出しなどで荒らしてカーテンウォールを作っているのです。[続きを読む]

 
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