パンナムビルのPCカーテンウォール

この原稿は東京大学の清家剛先生に依るPCSA広報誌(2001年23号)にご執筆頂いた原稿を当時のまま掲載しております。所属・肩書き等も当時のままです。

東京大学大学院 新領域創成科学研究科 環境学専攻 助教授・博士(工学)

清家 剛

高層ビルのカーテンウォールが印象的な映画といったら、みなさんは何を思い浮かべるだろう。超高層ビルの火災をテーマにした「タワーリングインフェルノ」(1974年)や、ハードアクションの「ダイハード」(1988年)を思い浮かべる人が多いかもしれない。映画の中で、特にアメリカ映画の中では、印象的な場面で高層ビルがたびたび登場する。その中でもカーテンウォールに注目するとなると、私にとっては、なんといってもアルフレッド・ヒッチコック監督の「北北西に進路を取れ」(1959年)である。この映画自体が好きだということもあるが、特筆すべきは、そのオープニング画面なのである。

この映画の最初は、うすい緑の背景に画面の下と右からパースのきいた並行線が数10本延びてきて平行四辺形の格子状の背景画面を完成させる。そこに格子に沿って右上がりに斜めになった文字が上から下へと降りてきて、主演のケイリー・グラントらの名前を表示たあと映画のタイトル「North by Northwest」を表示する。その背景の格子が、やがてニューヨークのミラーガラスのカーテンウォールの格子にぴったりと重なるのである。ニューヨーク名物の黄色いタクシーが多数映し出されたカーテンウォールは、自然に背景画面であり続け、残りの俳優やスタッフの名前を表示し続ける。やがて場面がいくつか転換して、映画のストーリーが始まるのである。

この映画が発表された1959年は、現代的なカーテンウォールの最初といわれる国連ビルが建設された1950年から9年たっており、数々のガラスの摩天楼がニューヨークに林立しはじめたころである。そしてミラーガラスのカーテンウォールが、現代的なイメージの素材として切り取られ、背景として使われているのである。だから私にとって最もカーテンウォールが印象的に使われた映画なのです。

さて。物語はめまぐるしい展開でやがてその国連ビルへと場面を移す。主人公はそこで殺人事件に巻き込まれ、犯人扱いされ逃亡することになる。ここで国連ビルの話を少々。ル・コルビュジエが基本構想をまとめ、W.ハリソンらの設計による国連ビルは、現代的なカーテンウォールの最初のものに位置づけられている。アルミニウムの本格的なカーテンウォールは、その後のカーテンウォールの元になった歴史的なものである。[続きを読む]

 
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