三菱商事ビルディング

- ●所在地
- 東京都千代田区丸の内2-3-1
- ●竣工時期
- 2006年3月
- ●規模
- 延べ面積/60,921m²
地下3階/地上21階/塔屋2階
高さ/99.8m - ●PC仕上げ・仕様
- 花崗岩
- ●設計
- 株式会社 三菱地所設計
丸の内エリアの開発では、地区計画や、デザインガイドラインなどさまざまな上位計画に配慮した設計が求められます。
その中でも特に、まちとひとのスケールを融合する三つのラインを意識しました。
第一に、日比谷通り沿いの建物で定着しつつある、高さを概ね100mとするスカイラインの尊重です。東京海上ビル本館やDNタワー同様、軒高を約100mとしました。
第二に、仲通りや東京駅の駅前広場に面した建物における歴史的な高さ31mというラインです。この高さをしっかりと形成することで、街の歴史的な景観との調和を図っています。
更に、今回の設計では「第3の高さ」を意識しました。これは、歩行者の視点に基づく仲通りの建物や街路樹との連続性に配慮したものです。ピロティの高さは、隣接する丸ビルの軒高と同じ8mに設定しています。また、エントランスホールは透視性のある設計とし、東京駅から丸ビルのアトリウム、そして三菱商事ビルのエントランスを通じて、皇居の緑を連続して見通せるようになっています。仲通りを歩いていても、皇居の緑が感じられるような、潤いある街づくりの仕掛けです。
皇居に面する場所であること、日本を代表する総合商社の本社ビルであること、またLCCの観点からも、素材としては石が相応しいと考え、外装材は花崗岩打込PC版をベースとしています。
皇居や東京駅を望む東西面は、ガラスを積極的に用い、眺望を確保するとともに、明るい執務空間を作っています。また、総合商社として近未来的な方向性を表現するよう、ガラス面が南北の石のフレームを突き抜けて上方に伸びています。このガラスの間に、石貼りの縦フィンPCを差し込むことでガラス窓への日射を低減し、エネルギー効率の高いデザインとしています。
そして南北面は、隣接ビルとの見合いに配慮し、開口部を抑えた重厚なデザインとしています。この石のグリットデザインは、周囲のビルからの視線を遮る役目を果たしつつ、建物に陰影をつけた庇効果でガラス面への直達日射を減らしています。
31m以下の低層部は、本社ならではのさまざまな用途を内包していますが、敢えて用途を表現せずに、方位に即した日射遮蔽に徹しています。これは、将来的な内部の用途変更を可能にするとともに、旧建物の均一なデザインモチーフを踏襲しているからです。我々の先輩が築いた近代オフィスのプロトタイプであった旧「三菱商事ビルヂング」の精神を受け継ぐデザインとなっています。
株式会社 三菱地所設計
永田 康