セレスティン芝 三井ビルディング

セレスティン芝 三井ビルディング
●所在地
東京都港区芝
●竣工時期
2002年3月
●規模
延床面積/61,072.92m²
地下2階/地上17階/塔屋2階
高さ/86.6m
●PC仕上げ・仕様
高層部:
花崗岩(テキサスパール)打込みPC版
低層部:
花崗岩(カレドニア)乾式工法
●設計
株式会社 日本設計

この一帯は江戸時代、広大な薩摩藩上屋敷があった場所であるが、その名残りを示すただ一本の石碑があるだけであった。再開発にあたって、改めて地域のアイデンティティを探ってみると、土地の由緒こそがその原点であることが自然に合意された。「土地の記憶の再生」というキーワードが開発全体のコンセプトになったのである。

以来5年、街区を南北に貫いて作られた公開空地を「芝さつまの道」と名づけ、随所に過去の名残りを表わす造作をおいた。建築においても、歴史的な情景に対して、遠い既視感を呼び起こすようなものがふさわしいと考えた。より直截的にいえば、抽象的で物質感のないもの、ではなく、ある種の物質感や隠喩的な形態など、人の日常に近いところから理解できるデザインが適切であろうと思ったのである。

建物の基準階は約3,200平方メートルの長方形である。3階から13階までの11層が事務所、14階から17階の4層がホテル客室となっている。ホテルとオフィスでは居室に求められる奥行き寸法が違うので、これらを上下に重ねると、内側に吹き抜けができる。吹き抜けを作ると、今度はそれを内外部どちらにするかの選択肢ができ、内部化したほうがコストは節約になるが面積を消費するので外部化した。この選択は、結果として天空に抜ける独特の空間をホテルの客室階にもたらした。

敷地は東西に開け、南北に隣接建築が迫る。それゆえ妻と平の外壁構成を変え、門型フォルムをなしている。立面が街のスケールから卓越しないように、PC版の大きな造作にくわえて、サッシの部材からなる格子状の小さな造作をオーバーレイした。両面とも外壁はPC版に、桜色のテキサスパールという花崗岩打ち込みである。

東西面のPCスパンドレルは、柱スパンに会せた6.4m×2.8mという大型のもので、サッシのリズムに連続する150ミリ幅のアルミボーダーを取り付けてある。南北面は柱型状のPC板である。建物の構成上、東西面はオフィスの顔、南北面はホテルの顔として、両者表現の強さを均等にした。特に、妻側をマイナーファサードにしないために、イレギュラーなスパンを利用して、象徴的な門型を入れた。これはビニロン繊維補強PCにフッ素塗装で作ったが非常にシャープなものに仕上がった。大型の金属部材よりも、さらに目地が少なく存在感がある。今後の展開を予感させる素材である。

株式会社 日本設計
黒木 正郎

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